まりんこ・ありんこ・とりんこ

「我慢しない生き方」の先へ

■「お母さん、いったい、どうしたらカレーがまずくなるの?」

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私の母は、料理が得意だ。

 

父に、「ピアノなんかやるより、料理極めた方がいんじゃないの!」と言われるぐらいだ。

 

私の母は、料理が得意だ。

 

私の母は、料理が得意だ。

 

私の母は、料理が得意なキャラだ。

 

これは一体何を意味するでしょう。

 

お母さんは、おいしいものしか作らない。

 

そう、お母さんは、おいしい料理をする人間である。

 

私は、幼少期から、そう刷り込まれてきた。

 

いえ、事実、母の料理はおいしい。間違いがない。

 

間違いなどあるはずがなかった。

 

しかし、ある時を境に戦いが始まった。

 

 

母の料理の凝り性はスパイス集めからして徹底していた。

 

当時は50種類ぐらいは揃えていた。

 

特に、カレー作りに関しては、ありとあらゆるスパイスをブレンドして作っていた。

 

市販のカレールーを使わないカレー。それはいわゆる”日本の一般的なカレー”とは違ったが、おいしいものだった。

 

それがある時から母の独創性により、おかしな方向へ向かっていった。

 

カレーで「ツン」とする。

 

その「ツン」というのは「辛いツン」ではない。

 

ツン

 

って感じだ。

 

(伝われ。)

 

どことなく右の鼻の穴から左の鼻の穴へ通り抜けていくような、そんなツンなのだ。

 

しかもツンだけではない。

 

プチッ

 

っていう。

 

当時、私は小学4年生程だったがー明らかにおかしいことが起こっているーそう思わざるを得なかった。

 その日は最後までどうにか食べた。

 

そしてまた、後日、全く同じカレーが振舞われた。

 

ヤバい。

えっと、

これ、

 

クッソマズい。

 

前回は認められなかった。「お母さんのご飯はおいしいごはん」だったのだから。

 

でもこれはさすがにマズい。

 

このプチッが鬼マズい。

 

逆に言えばこのプチッさえなければ非常においしいカレーである。

 

このプチッはすぐにわかった。物的証拠としてカレーの中にしっかり残っているのだ。

それはもちろん、スパイスである。

そのスパイスは少し細長い形をしていた。それだけはわかった。

 

話は簡単だった。

このプチッだけを食べなければいい。

 

しかし問題はあまりに多かった。

あまりにも大量に入ってること、

カレーは不透明なため搔き分けるのが大変なこと、

カレーを完食した時に謎に残されてしまうこと。

 

まりんこは困った。

 

本当は、こう言ってしまえばいい。

「お母さん、カレーがおいしくないよ」

「なんか変なスパイスいれてるでしょ?」

 

でも、言えない。

 

お母さん、カレー、おいしくないよ。

 

言えない。

 

お母さんを悲しませてはいけない。けなげな使命感がそこにはあった。

 

そこで私が一番最初にしたのは、プチッのありかを探すことだった。

必ずここにある。

この、50種類のスパイスの中に、必ずある。

母がキッチンにいない時間めがけてスパイスを探った。

そうして見つけ出したのがこれだ。

 

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「拙者、名をキャラウェイシードと申す」

 

この形、におい、これだ。これでしかなかった。 

 

 ちなみに私は27年間、このキャラウェイシードを料理に使ったことはない。

この間20年程の歳月が経ったが、今でもすぐに「キャラウェイシード」という名前が出てくる。それほど強い記憶である。

 

スパイスを手にとった時、強い憎しみを覚えたと同時に同情した。

 

「これ、すりつぶして使うもんなんじゃないの?」

 

そんな疑問が沸いたからだ。

 

そのままつぶさず食べてもいいかもしれないが、しかし、カレーにはいかんせん合わない。少なくとも私の口には合わなかった。

 

まさしく、母の作るカレーは「カレーとキャラウェイシード、というカレー」だった。

 

彼はあまりにも自立心が強かった。

 

カレーの中で、味が独立していた。

 

母の天然ぶりがさく裂している。

しかし、母はその独立した状態を許していた。

これだけはどうしても未だに舌が狂っているとしか思えない。

なお、私の舌がそこまで狂っているとも思えない。

 

そして次に私がしたことは、キャラウェイシードを隠すことだった。

50種類ものスパイスのうち、手前におかれていたエースのキャラウェイシードにベンチを温めてもらうことにした。

 

まあつまり、棚の奥の奥へしまいこんだということだ。

 

「もうこれでキャラウェイシードがカレーと共存することなどない」

私は勝利のこぶしを握っていた。

「次のカレーはいつかな?」

楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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R E ・ T U R N

 

 

 

母はキャラウェイシードを見つけ出していた・・・・・・。

 

そして、そこから約半年ほど冷戦は続いたのだ。

 

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

隠しては見つけられてカレーに入れられ

 

 

 

 

―――――――― プチッ ―――――――――

 

 

 

「おかあああああああああさああああああんん

マズい!!!

なんなの!?

これ本気でまずい!!!!

なんでこのスパイスいれんの?

このキャラウェイシード!!

知ってるんだから

このキャラウェイシードそのまま入れてんの!!!!!

そのまま!!!

マジまずいから!!!

マジでやめて!!!!!

バカなの?なんでそのまま入れんの?

カレーに勝るこのほのかに香る香り豊かなキャラウェイシードなんでそのまま入れんの?」

 

 

「えー?そうだったー?ごめんねー?今度からいれないね~~★」

 

 

 

 

・・・・・・。

 

 

こうして母との冷戦は終戦を迎えたのでした。

 

あのね。

 

 

半年も待つより

隠すより

さっさと口で伝えた方が手っ取り早いよ。

 

 

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結構わかりにくいところに置いてたのによくもまあお母さんも不思議がらずに見つけ出したよ